測量用ドローンの種類と選び方 - マルチコプター/固定翼、RTK機の違い
機体選びが測量の品質と効率を左右する
ドローン測量の精度や生産性は、解析ソフトの性能だけでなくどんな機体を使うかで大きく変わります。同じ現場でも、適した機体を選べば1フライトで終わる作業が、選択を誤ると何度も飛ばし直すことになったり、そもそも必要な精度が出なかったりします。
「ドローン」と一口に言っても、空撮向けの小型機から、広域をひと飛びでカバーする固定翼機、レーザスキャナを積んだ大型機まで幅があります。この記事では、測量・調査の用途を前提に、機体形式・測位方式・搭載センサー・スペック・日本の制度という5つの軸で、機体を選ぶときの判断基準を整理します。個別の製品名ではなく、長く使える「見方」の部分に絞って解説します。
ドローンは「5つの軸」で選ぶ
機体選びは「どれが一番いいか」ではなく「自分の現場に何が合うか」を見極める作業です。次の5つの軸を順番に当てはめていくと、候補が自然に絞り込まれます。
- ①機体形式 — 飛び方の違い。広さ・地形で決まる
- ②測位方式 — RTK/PPKの有無。要求精度とGCP工数で決まる
- ③搭載センサー — カメラかレーザか。成果物の種類で決まる
- ④スペック — 飛行時間・耐風・ペイロード。現場条件で決まる
- ⑤制度対応 — 機体認証・リモートID。飛行カテゴリーで決まる
以下、それぞれの軸を順に見ていきます。
軸1: 機体形式 - マルチローター/固定翼/VTOL
機体形式は飛び方そのものの違いで、カバーできる面積・地形・運用のしやすさに直結します。大きく3タイプに分かれます。
マルチローター(マルチコプター)
4〜8個のプロペラで飛ぶ、もっとも一般的なタイプです。空中で静止(ホバリング)でき、狭い場所から垂直に離着陸できるため、構造物点検や小〜中規模の地形測量に向きます。操作も比較的容易で、対地高度を保った「地形追従飛行」もしやすいのが利点です。一方、前進飛行の効率は固定翼に劣り、飛行時間が短い(多くは20〜40分程度)ため、広大なエリアを一度にカバーするのは不得意です。
固定翼
飛行機型で、翼の揚力で滑空しながら飛びます。同じバッテリーでマルチローターよりはるかに広い面積を、速く飛べるのが最大の強み。数百haクラスの広域測量や農地・河川などで威力を発揮します。反面、ホバリングできず、離着陸に滑走スペースや射出(カタパルト)・着陸スペースが必要です。狭い現場や構造物への接近撮影には向きません。
VTOL(垂直離着陸固定翼)
マルチローターのように垂直に離着陸し、上空では固定翼として効率よく飛ぶハイブリッド型です。「広域を飛びたいが滑走スペースがない」という現場の決定版で、近年の広域測量で増えています。良いとこ取りの代わりに、機体が大型・高価になりやすく、運用にもある程度の習熟が要ります。
軸2: 測位方式 - RTK/PPK搭載かノンRTKか
測量用かどうかを分ける最大のポイントが機体の測位方式です。写真1枚ごとの撮影位置(カメラ位置)をどれだけ正確に記録できるかで、必要なGCP(地上基準点)の数や最終精度が変わります。
ノンRTK機(単独測位)
一般的なGPS(単独測位)だけの機体です。記録される撮影位置は数m級の誤差を含むため、測量精度を出すにはGCP(地上基準点)を現場に多数設置し、解析時に座標を合わせ込む必要があります。機体は安価ですが、GCP設置の人手・時間がかかります。
RTK搭載機
機体にRTK-GNSSを搭載し、基準局からの補正情報をリアルタイムに受け取って撮影位置をcm級で記録します。これによりGCPを大幅に削減(あるいは検証点のみに)でき、現場作業が一気に楽になります。今日の測量用ドローンの主流です。基準局には自前のローカル基地局や、電子基準点を使うネットワーク型RTK(VRS)を利用します。
PPK(後処理キネマティック)
飛行中は生のGNSSログを記録しておき、帰社後にまとめて補正計算する方式です。電波が届きにくい山間部などリアルタイム補正が難しい現場でも、cm級の撮影位置を得られます。RTKと併用できる機体も多く、電離層擾乱でFix解が乱れやすい時期の「保険」としても有効です。
軸3: 搭載センサー - カメラかレーザか
機体の上に「何を載せるか」で、得られる成果物が決まります。測量で主に使うのは、写真を撮るカメラと、レーザでスキャンするLiDARの2系統です。
- RGBカメラ(写真測量) — もっとも一般的。撮影した多数の写真を重ね合わせ、SfM解析で3次元化します。低コストで色付きのオルソ画像・点群が得られますが、草木の下の地面は見えません。カメラの選び方はドローン測量用カメラの基礎と選び方で解説しています。
- UAVレーザ(LiDAR) — レーザで地表を直接スキャンします。機体価格は上がりますが、植生の隙間からレーザが届き、地面の点群を取得しやすいのが強み。森林や草地での地形把握に向きます。詳しくはUAVレーザの基礎へ。
- マルチスペクトル等 — 農業・植生解析向けに、可視光以外の波長を捉えるセンサーもあります。
センサーが重くなるほど、それを安定して運べるペイロード(積載能力)の大きい機体が必要になります。つまり軸3(センサー)は軸1(機体形式)・軸4(スペック)と連動して決まります。
軸4: スペックの見方 - 飛行時間・耐風・ペイロード
カタログスペックは数字が並びますが、測量運用で効いてくるのは次の項目です。
とくに見落としやすいのが飛行時間の「実効値」です。カタログの最大飛行時間は無風・ホバリング前提のことが多く、撮影飛行では7〜8割程度に見ておくと安全です。予備バッテリーの本数と充電体制まで含めて、1日でどれだけの面積をこなせるかを試算しましょう。撮影範囲とラップ率から所要枚数・飛行時間を見積もる考え方はドローン撮影計画の立て方で解説しています。
軸5: 日本の制度 - 機体認証・カテゴリー飛行・リモートID
日本では、機体の重量や飛ばし方によって守るべきルールが変わります。機体選びの段階でも、制度に適合しているかを必ず確認します。
- 機体登録・リモートID — 100g以上の無人航空機は登録が必要で、原則リモートID機能の搭載が求められます。測量用ドローンは基本的に対象になります。
- カテゴリー飛行と機体認証 — 人口集中地区上空や立入管理なしの第三者上空など、リスクの高い飛び方(特定飛行・カテゴリーII/III)では、機体認証や操縦ライセンスが関わってきます。どんな現場で飛ばすかによって、求められる機体の認証状況が変わります。
- 飛行申請・許可承認 — DID(人口集中地区)上空や夜間・目視外などは、飛行の許可・承認が必要になる場合があります。
用途別・機体選びの早見
5つの軸を踏まえると、典型的な現場では次のような組み合わせが基本形になります。あくまで出発点として、現場条件に合わせて調整してください。
- 小〜中規模の地形測量・土量管理 → RTK搭載マルチローター+RGBカメラ。検証点を数点。もっとも汎用的な構成です。
- 構造物・インフラ点検 → ホバリングと接近性に優れるマルチローター。高画質カメラやズームを重視。
- 広域(数百ha〜)の地形測量・農地 → 固定翼またはVTOL+RTK/PPK。離着陸スペースの有無でVTOLを選択。
- 森林・草地で「地面」が欲しい → UAVレーザ(LiDAR)搭載機。ペイロードの大きい機体が前提。
機体が決まったら、次は撮影計画です。飛行高度・ラップ率・コース設計の立て方はドローン撮影計画の立て方に、コースの実作成は3ツールで作るドローン測量コース実践ガイドにまとめています。