UAVレーザ(ドローンLiDAR)の基礎 - 写真測量との違いと使い分け
UAVレーザとは - レーザで地面を「直接測る」
UAVレーザ(ドローンLiDAR)は、ドローンにレーザスキャナを搭載し、地表に向けてレーザを高速で照射して地形を3次元計測する手法です。LiDARは「Light Detection And Ranging」の略で、光(レーザ)で距離を測る技術を指します。
同じく3次元データを得る写真測量(SfM)が「たくさんの写真から形を推定する」のに対し、UAVレーザはレーザで各点までの距離を直接測る点が根本的に異なります。機材は高価になりますが、草木の隙間からレーザが地面に届くため、写真測量が苦手とする森林・草地での地形把握に強いのが最大の特長です。この記事では、その仕組みと、写真測量との使い分けを図解で解説します。
仕組み1: レーザ測距(飛行時間)の原理
LiDARの距離測定は、ストップウォッチの原理に似ています。レーザのパルスを発射し、地面で反射して戻ってくるまでの往復時間を測れば、光の速さは分かっているので距離を計算できます。
UAVレーザは、このパルスを1秒間に数十万〜百万回以上という高速で照射しながら、ミラーなどで照射方向を振って地表を線状・面状にスキャンします。1点ごとに「距離」と「照射角度」が分かるので、センサーから見た各反射点の相対位置が決まります。
仕組み2: スキャナ+GNSS+IMUで点群になる
レーザスキャナが分かるのは「センサーから各点までの距離と方向」だけです。これを地図上の座標(XYZ)に変換するには、その瞬間にセンサーがどこにあり(位置)、どちらを向いていたか(姿勢)が必要です。そこでUAVレーザは3つの装置を組み合わせます。
- レーザスキャナ — 各点までの距離と照射角度を測る。
- GNSS(RTK/PPK) — センサー自身の位置をcm級で記録する。電子基準点や基地局を使う。
- IMU(慣性計測装置) — 機体の傾き(ロール・ピッチ・ヨー)を高頻度で記録する。
この3者の精度が掛け算で効くため、UAVレーザは高精度なGNSS/IMUを内蔵し、機材が高価になります。GNSSの位置精度が点群全体の座標精度を支える点は、写真測量でRTK撮影位置が効くのと同じ考え方です。
写真測量との最大の違い - 植生透過
UAVレーザが写真測量と決定的に違うのは、草木の隙間を通り抜けて地面に届く点です。写真測量は「見えているもの」しか復元できないため、樹冠や草に覆われた地面は復元できません。一方レーザは、葉の隙間を通った一部のパルスが地面まで届き、その反射を捉えられます。
このため、森林の地盤高や、草に覆われた法面・河川敷の地形把握では、UAVレーザが圧倒的に有利です。取得した点群から植生の点を取り除けば、地面だけの数値標高モデル(DEM)を作れます。逆に、地面が露出した造成地や構造物では、写真測量でも十分な成果が得られ、色(テクスチャ)が付く分かえって扱いやすいこともあります。
マルチリターン - 1発のレーザで複数の点
植生透過を支えるのがマルチリターン(複数エコー)です。1発のレーザパルスが、葉・枝・地面と複数の高さの物に当たると、反射が時間差で複数戻ってきます。多くのスキャナはこれを最初の反射(ファーストリターン)から最後の反射(ラストリターン)まで分けて記録します。
ファーストリターンは樹冠の高さ(樹高・植生量の把握に有用)、ラストリターンは地面の高さに対応することが多く、両者の差から樹木の高さを推定することもできます。点群を「地面点」と「地物点(植生・建物)」に仕分ける処理を地面分類(グラウンドフィルタリング)と呼び、点群の分類コードとして記録されます。
補足: レーザの波長 - 近赤外とグリーン(水域)
植生だけでなく「水」も、使うレーザの波長によって測れるかどうかが変わります。UAVレーザを選ぶときの一歩進んだ観点として、波長の違いを押さえておくと選択肢が広がります。
近赤外(NIR)レーザ - 陸上の標準
多くのUAVレーザが使う、波長900nm〜1000nm台の近赤外レーザです。陸上の地形・植生の計測に適し、コストも比較的こなれています。ただし水にほぼ吸収・反射されて水中まで届かないため、川や池・水たまりでは点が返らず、点群に「穴(欠測)」ができやすいのが弱点です。
グリーンレーザ - 浅い水域の水深も測れる
波長およそ532nmのグリーンレーザは水を透過しやすく、澄んだ浅い水域なら水面を通り抜けて水底まで届きます。これにより、河床や海岸の浅瀬の地形=水深を測量できます(航空レーザ測深/ALB、グリーンLiDARなどと呼ばれます)。植生の「隙間を抜ける」のと同じく、水という障害物を「透過する」イメージです。
水部と陸部を一度に取りたい用途には、近赤外とグリーンの2波長を搭載し、水面(近赤外)と水底(グリーン)を同時取得して水陸シームレスな地形を得る機種もあります。
点密度・精度・コストの考え方
UAVレーザの成果を左右する主な要素を整理します。
- 点密度(点/m²) — 単位面積あたりの点の数。高いほど細部まで捉えられます。飛行高度を下げる・飛行速度を落とす・スキャン速度の速い機種を使うと密度が上がります。森林では「地面に届いた点」の密度が実質的に効きます。
- 精度 — GNSS/IMUの性能と基準局までの距離、キャリブレーションで決まります。検証点での確認は写真測量と同様に重要です。
- コスト — 高精度GNSS/IMUとレーザスキャナを積むため、機材は写真測量機より高価です。広域の森林や、写真測量では成果が出にくい現場で費用対効果が出ます。
- データ量 — 取得点数が膨大になり、点群ファイルが大きくなります。LAS/LAZやCOPCでの管理・可視化が前提になります。
写真測量とUAVレーザの使い分け
「どちらが優れているか」ではなく、現場と目的で選びます。両者は競合ではなく補完関係です。
露出した地面の造成地・出来形管理・構造物点検なら、コストの低い写真測量で十分なことが多く、色が付く利点もあります。森林・草地・河川敷など植生の下の地盤が欲しい現場では、UAVレーザが本領を発揮します。近年は両方を同時取得できる機体もあり、用途に応じて組み合わせるのが実務的です。機体の選び方は測量用ドローンの種類と選び方を参照してください。