全国の点群オープンデータ入手ガイド - バーチャル静岡から各県の3次元点群まで
点群が「タダで」手に入る時代
かつて点群データは、自分で航空レーザ測量やドローン計測を行わなければ手に入らない高価な成果物でした。しかし近年、自治体が保有する3次元点群データをオープンデータとして無償公開する動きが全国に広がっています。研究・教育はもちろん、地形解析の検証、3D表現の素材、防災シミュレーションの下地など、誰でも実データを使って試せる環境が整いつつあります。
この流れを決定づけたのが、静岡県の「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル静岡)」です。県土を丸ごと点群化して公開する取り組みは、2021年の熱海土石流災害において、災害前後の地形を比較し崩壊土量を推定する解析に活用され、点群オープンデータの価値を社会に強く印象づけました。これを契機に、山形県・東京都・神奈川県・兵庫県・長崎県など、点群を公開する自治体が次々と増えています。
この記事では、代表的な点群オープンデータの入手先を整理したうえで、つまずきやすい「配布形式の違い」と、ダウンロードしたデータを当サイトの点群ビューアで実際に開くまでの流れを解説します。点群データそのものの構造(LAS/LAZや分類コード)については点群データ(LAS/LAZ)の基本と活用方法もあわせてご覧ください。
入手の起点:G空間情報センター
「どこで点群を探せばいいのか」への答えは、ほとんどの場合G空間情報センター(geospatial.jp、運営:社会基盤情報流通推進協議会)です。国・自治体・企業が公開する地理空間データのポータルで、各県の点群オープンデータの多くがここに集約されています。多くのデータセットはユーザー登録なしでダウンロードできます。
自治体は「自前のオープンデータサイト」と「G空間情報センター」の両方で配信していることが多く、入口は複数あっても実体は同じファイルというケースがよくあります。まずはG空間情報センターの点群データ検索で「点群」「3次元点群」「○○県」などで探し、見つからなければ各自治体のオープンデータサイトを確認する、という流れが効率的です。
全国をカバーする基盤データ
特定の県に限らず、全国規模で整備が進む基盤的なデータも押さえておくと、目的のエリアが特定の県の公開対象でなくても代替データを見つけやすくなります。
| データ | 提供 | 内容 | 主な形式 | 入手先 |
|---|---|---|---|---|
| PLATEAU(プラトー) | 国土交通省 | 全国の3D都市モデル。建物中心だが地形・一部点群も。対象は約300都市規模へ拡大中 | CityGML / 3D Tiles ほか | 公式 |
| 基盤地図情報・DEM・点群 | 国土地理院 | 全国のDEM(数値標高モデル)に加え、一部地域の点群データを公開 | DEM / LAS ほか | 点群データ |
| 航空レーザ測量データポータル | 日本測量調査技術協会 | 全国で公開されている航空レーザ測量データの所在を横断的にまとめたポータル | リンク集 | ポータル |
| 森林資源情報(高精度) | 林野庁 | 航空レーザ測量による高精度な森林計測データ(栃木・兵庫・高知ほか) | 点群 / DEM ほか | 公式 |
都道府県別の点群オープンデータ
ここでは、代表的な都道府県の点群オープンデータをまとめます。範囲・取得手法・配布形式・利用条件は更新されることがあるため、利用前に必ず配信元の最新情報をご確認ください(本記事の確認時点:2026年6月)。
| 自治体 / データ | 範囲・特徴 | 主な配布形式 | 利用条件 | 入手先 |
|---|---|---|---|---|
| 静岡県 VIRTUAL SHIZUOKA |
県ほぼ全域(人口カバー率100%)。航空レーザ(LP)+MMSを統合。熱海土石流の解析でも活用 | LAS(ZIP/7z) | CC BY 4.0 / ODbL | G空間 |
| 山形県 道路空間点群データ |
国道・県道の周辺空間。ULS+MMS。2025年3月公開で、県域公開は東北初 | LAS(図郭単位ZIP) | CC BY 4.0 / ODbL(登録不要) | G空間 |
| 東京都 デジタルツイン3次元点群 |
多摩・島しょ(2023)→区部(2024)。公開中の航空レーザ点群として国内最高精度。DSM・0.25mグリッド・微地形表現図なども | LP点群・DSM ほか | 用途を問わず二次利用可 | 3Dビューア |
| 長崎県 オープンナガサキ |
県内全域の3次元点群(平成24〜令和2年度取得、4点/m²以上)。九州で先駆けて2023年に全域公開 | LAS | オープンデータ | 公式 |
| 神奈川県 3次元点群データ |
横浜・川崎・相模原ほか。令和元〜4年度の航空レーザ(森林分野中心、市街地・港湾等は対象外) | LAS / TXT ほか | オープンデータ | G空間 |
| 大阪府 点群データ・岸和田城 |
地表面のグラウンドデータ+微地形図。岸和田城の3D点群(大阪公立大と共同計測、2020・2024)も | LAS / LAZ ほか | オープンデータ | 公式 |
| 兵庫県 高精度3次元地理空間データ |
全国初の全県1mメッシュ(DSM/DEM)。山間部は50cmメッシュとさらに高精度 | TXT(緯度経度標高) | オープンデータ | 公式 |
| 和歌山県 3次元点群データ |
県域の約65%。データ配布に加え3D Webビューアも併設 | TXT(経度緯度標高) | オープンデータ | 公式 |
| 北海道 3D点群データ |
航空レーザ測量の一部+水産林務部のドローン3D点群。全域は未整備 | LAS ほか | オープンデータ | 道ポータル |
| 宮城県 3次元点群データ |
県域の航空レーザ測量成果(2023〜)。公開リソースはグリッド・微地形・オルソが中心 | グリッド/微地形(CSV)ほか | オープンデータ | 共同ポータル |
| 埼玉県 河川点群データ |
管理河川をUAVドローン+ナローマルチビーム測深で計測(令和4〜5年)。「道路・河川の3Dマップ」でプレビューも可 | LAS(図郭単位ZIP) | CC BY 4.0 | G空間 |
| 山梨県 点群データ(航空LP・MMS) |
航空レーザは県全域、MMSは県管理道路。3DTilesは東京都デジタルツインビューアにも連携 | LAS等(ZIP) | CC BY 4.0 / ODbL | G空間 |
| 岐阜県 航空レーザ測量データ |
県林政部が平成25年度以降に取得した3次元地形データ。「県域統合型GISぎふ」で公開 | LAS ほか | 要申請(測量法の承認) | 公式 |
| 広島県 3次元点群データ |
2022年度〜の航空レーザ(土砂災害基礎調査等)。インフラ基盤「DOBOX」で公開 | 点群 / グリッド ほか | グリッド等は申請不要/オリジナル点群は申請制 | DOBOX |
| 石川県 能登地域の点群 |
令和6年能登半島地震に関連し、能登地域の航空レーザ点群・発災前のグラウンドデータが公開(国土地理院・林野庁等) | LAS / グラウンド | オープンデータ | G空間検索 |
| 奈良県(香芝市) 香芝RID |
香芝市内の道路をMMSで計測した点群(2013〜2019、約270km)。国内初の道路デジタルツインとしてWeb無償公開。ブラウザ上で閲覧・計測でき、範囲を選んでLASダウンロードも可能 | MMS点群(LAS DL可) | 無償公開 | 香芝RID |
| 栃木県ほか | DEM(0.5m等)が中心。林野庁の高精度森林資源情報も活用可能 | DEM / 点群 | オープンデータ | G空間検索 |
「入手先」リンクは各データの入口ページです。たとえば静岡県(VIRTUAL SHIZUOKA)は「中・西部」「富士山および静岡東部」「伊豆西部」「北西部」など地域ごとに複数のデータセットに分かれているため、リンク先からエリアを選んでダウンロードしてください。上表はあくまで代表例で、点群を公開する自治体は市町村単位でも年々増えています。最新の公開状況はG空間情報センターの検索で確認するのが確実です。
なお、富山県・長野県・京都府・鳥取県・島根県・愛媛県などは、航空レーザ由来のDEM(数値標高モデル)や派生データの公開が中心で、点群そのものの公開は限定的です(高知県は林野庁の高精度森林資源情報として航空レーザ由来データを公開)。これらも地形把握には有用なので、点群が見つからない地域の代替として活用できます。
配布形式の落とし穴:LAS/LAZ系とTXT(XYZ)系
点群オープンデータで最初につまずくのが「配布形式の違い」です。同じ「点群」でも、自治体によって大きく2系統に分かれます。LAS/LAZ系(点群専用のバイナリ形式)と、TXT(XYZ)系(「経度 緯度 標高」などをテキストで並べた座標列)です。前者はそのまま点群ソフトで開けますが、後者はいったん点群形式へ変換する必要があります。
たとえば静岡県や山形県はLAS(ZIP圧縮)で配布されるため解凍するだけで使えますが、兵庫県・和歌山県などはテキスト系での配布が中心で、ひと手間かかります(神奈川県のようにLASとテキストの両方を選べる場合もあります)。ダウンロード前に「どの形式か」を確認しておくと、後の作業がスムーズです。
| 配布形式 | 内容 | 点群ビューアで開くには |
|---|---|---|
| LAS(非圧縮) | 点群専用のバイナリ。ZIP圧縮で配られることが多い | 解凍してそのまま読み込み可 |
| LAZ | LASをロスレス圧縮(サイズを70〜80%削減) | CloudCompare等でLASに変換 |
| COPC | クラウド配信に最適化したLAZ | 同上(LASに変換) |
| TXT / CSV(XYZ) | 「経度 緯度 標高」等のテキスト座標列 | CloudCompare等で読込み→LASで保存 |
| PBF / 独自形式 | 配信専用のバイナリ | 提供元の手順で点群化(LAS化) |
変換には無料のCloudCompare(GUIで手軽)や、コマンドラインのLAStools・PDALが定番です。たとえばLAStoolsでLAZをLASに変換するなら、次の1行で済みます。
テキスト(XYZ)の場合は、CloudCompareで列の対応(X・Y・Z、必要ならRGB)を指定して読み込み、「Save as → LAS」で書き出すのが簡単です。座標値が平面直角座標系で記録されている場合は、用途に応じて座標変換ツールなどで緯度経度との対応を確認しておくと安心です。
入手したデータを点群ビューアで開く
ダウンロードしたデータは、当サイトの点群ビューアを使えば、ソフトのインストールなしでブラウザだけで3D表示できます。読み込んだファイルはサーバーに送信されず、すべてブラウザ内で処理されるため、業務データでも安心して試せます。
使い方はシンプルで、LASファイルをビュー上にドラッグ&ドロップするだけです。静岡県・山形県のようにLAS(ZIP)で配布されているデータは、解凍してそのまま読み込めます。
利用上の注意(ライセンス)
オープンデータは「自由に使える」とはいえ、無条件ではありません。多くの点群データはCC BY 4.0(またはデータベース向けのODbLとのデュアルライセンス)で公開されており、いずれも出典の表示(帰属)が条件です。成果物やWebページで利用する際は、提供元と必要に応じてライセンス名を明記しましょう。
また、自治体のデータは測量成果として配布される場合があり、用途によっては測量法に基づく複製・使用の承認申請が必要なことがあります(たとえば岐阜県は申請制)。申請不要で自由に使えるもの(静岡県・山形県・東京都など)と、申請が要るものが混在するため、ダウンロード元の利用条件を必ず確認してください。
たとえばCC BY 4.0のデータを加工して使う場合、次のような表記が分かりやすい例です。