概要・機能

GNSS解析は、RINEXファイルからその日その時刻の衛星コンディションを再現するツールです。 ジェノバの後処理データ、国土地理院の電子基準点データ、受信機から変換したRINEXを読み込むと、 DOP(精度低下率)・可視衛星数・スカイプロット(衛星配置)・SNR(信号強度)を計算して表示します。

「あの日あの時間、なぜFixしなかったのか」「観測時の衛星配置は十分だったか」を あとから検証するための過去向きのツールです。 これから飛ぶ日の予測はフライト予報をご利用ください。

RINEX航法ファイル(.YYn/.YYg/.YYq・混合nav .rnx)と観測ファイル(.YYo/.obs)に対応
ファイルの種別は内容から自動判別。gzip(.gz)圧縮のまま・複数同時読み込みも可
ファイル不要モード — 日付を指定するだけで放送暦(IGS/BKG)を自動取得
6衛星系対応(GPS/GLONASS/QZSS/Galileo/BeiDou/NavIC)、仰角マスクは0〜45°で可変
PDOP/HDOP/VDOPと可視衛星数のグラフ、時刻スライダーで任意時刻を読み取り
スカイプロットで「計算上見えるはずの衛星」と「実際に受信した衛星」を比較
衛星ごとのSNR(C/N0)グラフでマルチパス・遮蔽の疑いを確認
時刻ごとのDOP・衛星数をCSV出力(Excelでそのまま開ける形式)
読み込んだファイルはブラウザ内で処理。サーバーには送信されません
DOPとは: 衛星の幾何配置による測位精度の低下率(Dilution of Precision)です。 値が小さいほど良好な配置で、GNSS観測ではPDOP 3以下が目安とされます。 衛星が空の一方向に偏っていると、衛星数が多くてもDOPは悪化します。
GNSS解析の画面。RINEXファイルの読込エリアとファイル不要モード、地図で指定した観測地点、仰角マスクと衛星系の設定パネル

使い方

RINEXファイルを読み込む

読込エリアにファイルをドロップするか、クリックして選択します。航法・観測の区別はファイルの中身から自動判別するので、種類を選ぶ必要はありません。

  • 航法ファイル(衛星の軌道): .YYn(GPS) / .YYg(GLONASS) / .YYq(QZSS) / 混合nav(.rnx)。YYは西暦下2桁で、2026年なら「.26n」です
  • 観測ファイル(受信機の記録): .YYo / .obs
  • gzip圧縮(.gz)は解凍せずそのまま読み込めます。複数ファイルの同時読み込みも可能です
  • 入手先は、ジェノバの後処理データ配信・国土地理院の電子基準点データ提供サービス・お使いの受信機(Trimble等)からの変換出力です

ファイルがない場合: 「📡 ファイル不要モード」で日付(JST)を指定して「放送暦を取得してDOP計算」を押すと、その日の放送暦を自動取得します。前日までの日付が対象で、当日は朝9時までの確定分のみです。この場合は観測地点を地図で指定してください。

観測地点を設定する

DOPは地点によって変わるため、観測地点の指定が必要です。次のいずれかで設定します。

  • 地図クリック: 右パネルの地図をクリック、またはマーカーをドラッグ
  • 観測ファイルから自動: 観測ファイルを読み込むとヘッダの概略座標が自動で入ります
  • 現在地: 「📍 現在地」ボタンで取得
  • 手入力: 緯度・経度・楕円体高を直接入力(手入力は他の方法より優先されます)

楕円体高は数十m程度の誤差があってもDOPはほとんど変わりません。分からない場合は概算値で構いません。

仰角マスクと衛星系を設定する

現場の条件に合わせて計算条件を調整します。設定を変えても衛星位置は再計算しないため、即座に反映されます。

  • 仰角マスク(既定15°): この高度より低い衛星を除外します。山間部や市街地など遮蔽の大きい現場では値を上げると実態に近づきます
  • 衛星系: 受信機・ドローンが実際に使用する衛星系だけにチェックを入れます。使っていない衛星系を含めるとDOPが実際より良く出ます
  • 不健全(unhealthy)衛星を除外: 放送暦のヘルスフラグが異常な衛星を計算から外します。通常はONのままにしてください
  • 計算間隔: 航法ファイルのみのときの計算ステップです。既定の「自動」は期間の長さに応じて10秒〜1分を選びます

DOPと衛星数を確認する

「DOP・衛星数」パネルに、読み込んだ期間のDOP変化と衛星数の推移が表示されます。

  • DOPグラフ: PDOP/HDOP/VDOPの変化。谷になっている時間帯が良好な観測時間帯です
  • 衛星数グラフ: 衛星系別の内訳で表示されます。観測ファイルがあれば実受信数も重ねて表示します
  • 時刻の選択: グラフのタップ・時刻スライダー・「−1 / +1」ボタンで時刻を選ぶと、その時刻のPDOP・HDOP・VDOP・衛星数が数値で表示されます
  • 時刻はすべて日本時間(JST)で表示されます

観測ファイルも読み込むと、「PDOP(計算)」と「PDOP(実受信)」を並べて確認できます。実受信のPDOPが大きく劣る時間帯は、その時刻に遮蔽やロストがあったことを示します。

DOP・衛星数パネルの画面。1日分のPDOP/HDOP/VDOPグラフと衛星系別の可視衛星数グラフ、選択時刻の数値とスカイプロット

スカイプロットで衛星配置を見る

選択した時刻の空の様子を、天頂を中心とした極座標で表示します。

  • 色は衛星系、中心に近いほど高仰角です。グレーの外周帯が仰角マスクで切られた範囲を示します
  • 白抜きの点: 計算上は見えるはずなのに実際には受信されていない衛星です。どの方位で遮蔽が起きていたかが分かります
  • 「スカイプロットに衛星番号」をONにすると、G05・J01のような衛星番号を表示します

SNRで信号強度を確認する

観測ファイルにSNR(C/N0)が含まれる場合、「SNR(信号強度)」パネルが表示されます。衛星を選ぶとその衛星の信号強度の推移が見られます。

  • 通常は35〜50dB-Hz程度です。低仰角で下がるのは正常です
  • 高仰角なのに低い、または急落を繰り返す場合は、マルチパス(反射波)・障害物・電波干渉が疑われます

CSVで書き出す

「CSVエクスポート」で、時刻ごとのDOP・衛星数を書き出します。

  • 出力される列は、日時(JST)・PDOP・HDOP・VDOP・計算上の衛星数です。観測ファイルがあれば実受信衛星数と実受信PDOPも追加されます
  • Excelで文字化けしない形式で出力するため、そのまま開いて報告書用のグラフや表に使えます

よくある質問

航法ファイルと観測ファイル、どちらが必要ですか?
DOPの計算には航法ファイル(衛星の軌道情報)と観測地点が必要です。 観測ファイルだけでは「実際に何機受信できたか」は分かりますが、DOPは計算できません。 両方を読み込むと、計算上の衛星配置と実際の受信状況を突き合わせられるため、 受信できなかった原因(遮蔽か、そもそも衛星がいなかったのか)が判別できます。
RINEXファイルはどこで入手できますか?
国土地理院の「電子基準点データ提供サービス」、ジェノバの後処理データ配信、 またはお使いのGNSS受信機のログをRINEXに変換したものが利用できます。 手元にファイルがない場合は「ファイル不要モード」で日付を指定すれば、 IGS/BKGの放送暦を自動取得してDOPだけを再現できます。
Hatanaka圧縮(.YYd)のファイルは読めますか?
Hatanaka圧縮(CRINEX)には対応していません。RNXCMPのCRX2RNXなどで 通常のRINEX観測ファイル(.YYo)に復元してから読み込んでください。 なお、gzip圧縮(.gz)は解凍せずそのまま読み込めます。
「計算上の衛星数」と「実受信衛星数」が違うのはなぜですか?
計算値は軌道から求めた「空にいる衛星」の数で、実受信は受信機が実際に捕捉できた衛星の数です。 差が出る主な原因は、山・建物・樹木による遮蔽、マルチパス、受信機が対応していない衛星系・信号、 仰角マスク設定の違いです。スカイプロットの白抜きの点を見ると、どの方位・仰角で失っていたかが分かります。
フライト予報との違いは何ですか?
フライト予報はこれから飛ぶ日の予測を見るツールで、 GNSS解析は実際に取得したRINEXから過去の実績を再現するツールです。 計画時はフライト予報、観測後の検証や精度不良の原因調査にはGNSS解析、という使い分けになります。
どの衛星系にチェックを入れればよいですか?
お使いの受信機・ドローンが実際に使用する衛星系に合わせてください。 日本ではGPS+QZSS(みちびき)が基本で、多くのRTK対応機はGLONASS・Galileo・BeiDouにも対応しています。 使っていない衛星系まで含めると、実際より良いDOPが出てしまいます。
測位精度が悪かった原因の証拠として使えますか?
原因の切り分けには有効です。DOPが悪化していた時間帯と現場での不具合の時刻が一致すれば衛星配置が要因、 DOPは良好なのに実受信が落ちていればその場の遮蔽やマルチパスが要因、という判断ができます。 ただし本ツールの計算値は幾何配置に基づく理論値であり、 実際の測位品質は上空の開け具合・電離層の状態・機材にも左右されます。最終的な判断は他の記録と併せて行ってください。

トラブルシューティング

「RINEXファイルではありません」と表示される
解決策: ファイル先頭に「RINEX VERSION」の行があるものだけを読み込めます。 ZIP等でまとめられている場合は解凍し、中のRINEXファイル本体を読み込んでください (gzip単体の.gzはそのままで構いません)。受信機の独自形式(T02・UBX等)は メーカーの変換ソフトでRINEXに変換してからご利用ください。
「Hatanaka圧縮(CRINEX)は未対応です」と表示される
解決策: 拡張子が.YYd(または中身の先頭が COMPACT RINEX)のファイルです。 RNXCMPに含まれるCRX2RNXで通常の観測ファイル(.YYo)に復元してから読み込んでください。
DOPグラフが空のまま計算されない
解決策: DOPの計算には航法ファイルと観測地点の両方が必要です。 パネル上部のメッセージを確認してください。 「航法ファイルも読み込むと…」と出ていれば航法ファイル(または放送暦の取得)が、 「観測地点を入力してください」と出ていれば地図クリック等での地点指定が不足しています。 また、衛星系のチェックをすべて外すとDOPは計算できません。
「航法データの期間と観測期間が重なっていません」と表示される
解決策: 観測ファイルと別の日の航法ファイルを読み込んでいます。 「全クリア」で読み込みをリセットし、観測日と同じ日付の航法ファイルを読み込み直してください。 ファイル名の日数(通日)と西暦下2桁が一致しているかが確認の目安になります。
放送暦を取得できない(ファイル不要モード)
解決策: 配信元に日次ファイルが揃うまで時間差があるため、 当日分は朝9時までの確定分のみが対象です。まずは前日以前の日付でお試しください。 それでも取得できない場合は、ネットワーク接続を確認して時間をおいて再実行するか、 電子基準点データ提供サービス等から航法ファイルを取得して読み込んでください。
観測地点が意図しない場所になっている
解決策: 観測ファイルを読み込むとヘッダの概略座標が自動設定されるため、 基準局側のファイルを読むと基準局の位置になります。 地図パネルの上に表示される「どこから設定されたか」の表示を確認し、 必要に応じて緯度・経度を手入力で上書きしてください。手入力の値が優先されます。
読み込みや操作が重い
解決策: 1秒間隔で1日分といった大きな観測ファイルは解析に時間がかかります。 「計算間隔」を30秒や1分に広げると軽くなります。 また、必要な時間帯だけを切り出したRINEXを使うのも有効です。